首都サンホセで国連旗や各国の国旗を持ちパレードする子どもたち
映画『コスタリカの奇跡』より

中米の小国コスタリカが宝石のようにキラキラと光り輝いている。決して安定的とは言えない中米で1948年に軍隊を撤廃。以後、約70年もの間平和を維持してきた。むしろ、中米の紛争を解決に導いた功績で、1987年に当時のオスカル・アリアス大統領はノーベル平和賞を受賞している。今年7月に調印された核兵器禁止条約は20年前にコスタリカが提案し、議長もコスタリカ人だった。コスタリカは自国だけが平和になること留まらず、平和を輸出する国になっているのだ。

近代コスタリカの出発点は、1948年12月に革命に勝利したホセ・フィゲーレス・フェレール(後の大統領)が「兵士の数ほど教師を」をスローガンに突如軍隊を撤廃したことが挙げられるだろう。この歴史的出来事を経て、コスタリカは軍事予算ゼロを実現。教育費として実に国家予算の3割を費やし無償化。医療費も無料とした。国民の幸福度の最大化を目指す福祉国家へと向かっていったのだ。教育への熱心さは憲法にも現れており、憲法でGDPの8%を教育費に使うと明記されているほどだ。

軍隊の撤廃演説をするホセ・フィゲーレス・フェレール 
映画『コスタリカの奇跡』より

1948年12月1日、ホセ・フィゲーレスは、こう演説している。

「コスタリカの常備軍すなわちかつての国民解放軍はこの要塞の鍵を学校に手渡す。今日から ここは文化の中心だ。第二共和国統治評議会はここに国軍を解散する。」
「わが国の安全は警察によって十分に守られているからだ。」

コスタリカの魅力はまだまだある。国土の4分の1以上を自然保護しており、面積当たりの生物多様性は世界一といわれている。電力の発電は自然エネルギーでほぼ100%を達成しており、世界初のカーボンニュートラル国家を目指している。さらに、イギリスの民間シンクタンク「New Economics Foundation」による環境持続可能性と人間の健康や幸福度を測る指標「地球幸福度」ランキングで過去3年連続で世界一に輝いている。

平和で持続可能で、国民の幸福度が高い国。知れば知るほどコスタリカについて興味が増し、筆者は家族とともに1年弱実際にコスタリカに暮らして今年の春先に日本に戻ったところだが、出会った多くのコスタリカの方々に、どうしても聞きたいことがあった。それは、本当にこれからも軍隊なしでいいのか?平和を維持できるのか?という質問だ。政府関係者から一般人まで共通して誰もが二度とコスタリカが再軍備することはないだろうと答えたことは、正直驚きを隠せなかった。コスタリカに出発前に会ったコスタリカ在住経験者たちからは、コスタリカ人にとって平和を愛することは、もはやコスタリカ人のアイデンティティーになっていると聞かされていたが、まさにその通りだった。「戦争をすることを忘れた人々」とでも表現したら適切かどうかは分からないが、軍隊を廃止してから約70年の間に、軍事的なこと、戦争的な要素がきれいサッパリなくなり、平和しか存在しない社会になっているのだ。少なくとも人々の心理上においては。

以前コスタリカ国会を訪問した際、対応してくださった広報官のリカルド・ルイスさんは、

「君たちは軍隊がない国のことを想像できないと言う。
私たちは、軍隊が存在する国のことを想像できないんだよ。」

と、コスタリカ人の平和感覚を説明してくれた。日本と違い、米軍基地もなければ自衛のための軍隊も存在しないコスタリカは、戦争を卒業しているのだ。しかし、いざ外国に侵略されたらどうするのかというと、国際法や国際社会に訴えるという。実際にニカラグアがコスタリカの一部領土に軍を送って占拠した際は、平和的に国際司法裁判所に訴え出て、勝訴している。また、アメリカ大陸の国々が加盟する集団安全保障体制である米州相互援助条約、通称リオ条約にも加盟しているので、軍隊がないからといって、無力ということではない。

このようにコスタリカは、国土面積や人口こそ少ないものの、これまで行ってきた大胆な政策や未来を見据えたビジョンの中身は、実に未来志向である。国こそ小さいものの、存在感は抜群で、道徳を重んじる国家として大国の風格を感じさせる。そして今、軍を撤廃し、国民の幸福度を最大化する社会福祉国家建設を進めてきたコスタリカは、持続可能国家作りに邁進している。

そんなコスタリカの壮大な理想的平和国家の建設プロジェクトに焦点を当てたドキュメンタリー映画が『コスタリカの奇跡~積極的平和国家のつくり方~』だ。コスタリカに暮らしていた時に出会い、今年初夏に日本で公開した映画だ。監督は2人のアメリカ人の教授で、世界一軍事費を使い、国民皆保険制度が存在しないアメリカと比較しながら、明解に近代コスタリカの国家建設プロセスを表現した作品である。

同じく平和主義を掲げる日本。しかし、日本には事実上の軍隊が存在し、米軍基地が全国各地に存在している。米国の同盟国として戦費を負担することに留まらず、今では日米安保が強化され、自衛隊は世界の隅々まで派遣が可能となった。平和憲法9条が有りながらも、実態は、米国の戦争に積極的に参加しているのだ。コスタリカの平和を愛し、維持してきた姿を日本に届けることで、少でも日本が本来の平和主義へ向かうことに貢献していきたいと思う。そして「日本の奇跡」を!

ドキュメンタリー映画が『コスタリカの奇跡~積極的平和国家のつくり方~』上映スケジュール

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