環境保護、国際援助、災害援助等のために、多くの人は人生で一度は寄付した経験があることでしょう。しかしその寄付が誰かを傷つける原因になっていたとしたら?このように寄付行為や海外援助のあり方に疑問を投げかけるドキュメンタリー映画が『ポバディー・インク ~あなたの寄付の不都合な真実~』です。本作は50以上の国際映画祭で受賞し、アメリカではハーバード大学、スタンフォード大学、MITなどの一流大学でも次々と上映されている衝撃作となっています。本作は、いよいよ日本でも8月6日(土)に渋谷アップリンクで劇場公開となります。

例えば映画の舞台の一つとなっているハイチでは2010年の地震で大規模な被害を受けましたが、無数の国際NGOや各国政府機関が援助に乗り出しました。しかし援助が何年経っても止まらないために、地元の人々の自立を妨げていることを指摘します。例えば外国から援助米が届き続けるため、米農家は商売ができず、職を失うようなケースがあるのです。援助が貧困を生み出すという本末転倒なことが起きている実態を明らかにします。

なお、ハイチの米農家の悲劇は地震前に始まっています。安価なアメリカ産米は、ハイチのためになると、1980年台前半に自由貿易化が進められたために、ハイチの米農家は壊滅的なダメージを受けています。これについてクリントン元米国大統領は、「私が失敗を生んだ。誰のせいにもしない。この責任を背負って生きていく」と反省の弁を述べています。

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©PovertyCure

「貧困についての考え方や枠組みは、数十億ドル規模の産業を発展させるに至りました。他の産業と同じく、貧困産業もビジネスを維持しようとしています。この産業内で働く人々の善意に関係なく、貧困解決よりも自らのコミュニティの利益が優先される構造になってしまっているのです」

本作のマイケル・マシスン・ミラー監督はこう指摘します。要するに貧困を根本的に解決せず、貧困という状況を前提に貧困産業が成り立っている側面を指摘しているのです。

私自身は過去10年近くNGO支援のプロジェクトを主催してきた経験から、監督の言わんとしていることがよく理解できます。これまでに、いくつもの素晴らしい国際協力団体のリーダーや職員と出会ってきました。特に「私たちの存在が必要ない状況を作ることが私たちの目的です」などと、将来、団体が存在しないことを願うほど、真剣に問題解決に取り組む団体との出会いはいつも感動していました。一方で、もう支援が必要ないのに自分たちの職を維持するために存在し続けるような団体と出会ったことも事実です。寄付は必要です。しかし、しっかりと見極めないと、その寄付によって誰かを傷つけることになってしまうこともあるのです。この映画によって、寄付や国際援助についてのあり方について新しい視点をもたらすことができたらと願っています。

「この映画を観たら貧困と第三世界を決して同じ様に見れないだろう」

ドキュメンタリー映画監督として著名なマイケル・ムーア監督は『ポバディー・インク ~あなたの寄付の不都合な真実~』をこう評しています。どうぞ、映画『ポバディー・インク ~あなたの寄付の不都合な真実~』を劇場でご覧ください。


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