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緒方用光(もちみつ)さん。1924年2月11日、神奈川県藤沢市宿生まれ。現在91歳。映画配給会社、九州シネマ・エンタープライズ(福岡市)現役社長。前九州ヘラルド社長。最初に入社したのは満州映画協会(満映)だった。

税務署勤務だった父について、東京の小岩に引っ越す。当時の小岩は水たまりが多く、ある時落ちた。毛糸のセーターを着ていたから浮いて、通りがかりの人に竿で引き上げてもらった。「強運なんです」と茶目っ気一杯に話す。その後父が満州の税務官僚となり、小学5年生の時に先に単身赴任していた父のところに引っ越した。旧制中学を卒業後、18歳で国策映画を作っていた満映の付属養成所に入り、後に社員になる。最初の夢はカメラマンになることだったが、社員が次々と兵隊に取られていくなか、フィルム現像など何でもやる雑用係となった。エキストラで映画に出たこともある。

当時の理事長は満州で謀略活動を行っていた甘粕正彦。兵隊として出征する2日前の1945年3月9日、甘粕理事長に呼ばれると、「命を大事にしなさい」と意外な言葉をかけられた。これから戦争に行くのに自分を守れと。彼は恐らく負けることを分かっていたのではないか。

3月11日、鞍山の防空部隊に配属した。終戦間際は奉天(現在の瀋陽)に行き、たこつぼを掘り、箱爆雷といってソ連の戦車が来たら特攻して自爆するという訓練を毎日していた。ある時朝起きたら、日本軍はアメリカが来てもソ連が来ても抵抗しないということになった。僕らの岩田中隊長は「関東軍は降伏しても、我が隊は降伏せん」と言い、「俺達まだ戦争しなきゃいかんのか」と思った。敗残兵として逃げ回っていると死んでいる日本兵の遺骸をいくつも見た。やがて捕虜になり、10月の初旬、列車に乗せられて連れて行かれたのがカザフスタンだった。ヨーロッパに近いところで、収容所の管理がしっかりしているところだから1日3,000カロリー。食べきれないほど食事が出た。

甘粕さんは敗戦と同時に、満映の機材を全部中国側に引き渡すようにと言い残した。満映養成所の一期生で先輩の馬清守が留学していた日本から戻ってきて引き受けた。甘粕さんはきちっとしている人だった。満州時代、全てが悪かったのではなく、このことが中国映画界の「ゆりかごの時代」であったと評価されている。

帰国後、叔父などが住んでいる本籍、久留米に帰り弟と再会した。弟は三沢基地から特攻隊として飛び立つ前日、空襲を受けて自分の飛行機が焼けてしまい助かった。今でも健在だ。

今の日本については秘密保護法が出てきて、戦争に向かう可能性が出てきたと思う。都合の悪いことを拡大解釈する。ホルムズ海峡に機雷がなくても誰かがあると言えば、誰も知れないからあることになる。自衛隊の海外派遣となり、戦争の地ならしと変わらない。秘密保護法はあってはいけない。

甘粕はハルピンで日本の領事館に爆弾を投げ込んでみたり、戦争の口実を作る謀略活動を行っていた。政治が国民の知らないところでそういうことをする。いくらでも口実を作られる。今の秘密保護法、安倍総理が自衛隊を外国に出せるようにする。一緒だ。

沖縄を見ていても酷い。サンゴ礁を壊し、強引に作業を進めている。嘉手納よりも大きな基地を作ろうとしているでしょう。安倍晋三という人は岸信介の孫。彼は自分が岸信介の孫であることを威張って言うが、岸信介は侵略した満州で傀儡国家を作ってきた人。そのお爺さんを尊敬している。満州でやってきたことを踏襲したいのかと私は思う。

戦争は悲惨ですよ。捕虜になっても死ぬ人もいる。強制労働中、雷に撃たれて死んだもの。死にはしなかったものの石炭の下敷きになったもの。作業場で自動車に敷かれた人。戦争で捕虜になっていなければこんなことは起きない。戦争は人の理性を失わせる。

戦後、学校で現近代史を教えないのは問題だ。中国大陸を侵略し、米国のハワイを奇襲した。日本の若い人は政治感覚が抜けてきている。選挙権があるのに選挙に行かない。自分で権利を放棄している。こういうことも学校で教えてない。選挙に行くということは自分の意思を表示すること。中国については明治時代から侵略してきている。第一次大戦の時に、青島にドイツがいた。そこに日本は行く必要がないのに戦争して、20何箇条かの要求(対華21カ条要求)を突きつけている。酷い要求だった。日本の若い人が歴史を学んでないのは過失だ。それでいて靖国神社をやたらに大事にする。靖国神社は第二次世界大戦を起こしたことを正当だったと言っているが、そんなことはない。歴史を若い人が知らないってことに問題があるのではないか。選挙権とは自分の権利だということを意識しないとだめだ。ただ選挙権を行使するにあたっても客観的に物事が見れるようじゃなきゃだめだ。

取材日:
2015年3月25日

取材場所:
九州シネマ・エンタープライズ

※この文章には、この映像記録以外に別の機会に直接聞いたお話も含めています。構成上、文章と映像の出現ヶ所が入れ違うところがあります。

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取材にいったユナイテッドピープル関根健次と、アーヤ藍と緒方さん。


満州の記録―満映フィルムに映された満州


キメラ 満洲国の肖像 [増補版] (中公新書)

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