2010/09/24
タシお爺さんと昨晩も同じように晩ご飯のお話をした。もう82歳なのに、仏教の歴史を丁寧に教えてくれた。完全に理解できているか不安だが、四つの教義のうち、三つしか日本に伝わっていないと言っていた。それから、なんて無知なんだろうと思うが、チベット仏教には大きくふたつの宗派があり、黄色と赤帽子派に分かれているそうだ。ダライラマ法王は、黄色派。
1956年、始めてダライラマ法王とパンチェンラマがラダックに来たとき、タシお爺さんはパンチェンラマの通訳をしたそうだ。そう嬉しそうに離してくれた。その後、ラダックの仏教協会の代表をしていた時には、ダライラマ法王がラダックに来る時の責任者として宿泊地や食事の手配をしていたとも。へミスというモネストリーの美術館のラダック語、英語の対訳をしたのもお爺さん。タシお爺さんとの夜の会話は貴重な経験となった。
あと、昨日はTIBET HERITAGE FUND(THF)の後、ギャッツォの案内でPADMA KARPO INSTITUTEを訪問。The 12th Gyalwang Drukpaにより設立された学校で、設計は無償でオーストラリアのシンボルとなっている劇場をデザインしたARUNが担当したそうだ。耐震設計で、太陽光発電のみで電気をまかなっている。ゴミのリサイクルも徹底しているし、先進的な学校だった。英語教育を3歳から行っていることにもまた驚きだった。日本よりもよい教育環境なのではないだろうか。
それからギャッツォのすすめで、へミス(HEMIS)とティクセイ(THIKSAY)寺院を訪問した。へミスでは日本や中国でもお目にかかれそうもない仏像が多数展示されていた。過去にインドのマハラジャの侵攻があった際、山の奥に隠れているへミスはマハラジャに知られることなく守られたという。へミスは毎年有名なフェスティバルが開催されている。
ティクセイではタイミング良く僧侶たちのお祈りを聞くことが出来た。ティクセイからの眺めは最高に美しかった。眼下にはインダス川が流れ、収穫が終わったばかりの畑が輝いていた。
* * *
今朝は、アラームが鳴る3分前ぐらいにギャッツォがドアをノック。悔しい思いをしつつ起床。ギャッツォとアンモ(奥さん)と最後の朝食。今度は学生を連れてくるよと約束して出発した。間もなく、ラダックは厳しい冬を迎える。
朝7時ジャストに空港着。カシミール地方が緊迫しているためか、何人もの兵士が厳重に警備をしている。セキュリティーチェックを通過。チェックインを済ませるが、便が遅れているという。待つこと3時間以上。結局この日の便は欠航だった。Kingfisher、初利用で復路欠航。ローコストキャリア(LCC)ってこんなもんなのだろうか。明日はちゃんと乗りたい。
ラダックの町に仕方なく戻り、単車を借りてツーリングしようとか、いろいろ試みるがすべて失敗。単車は1日500ルピー(約1,000円)で借りれるんだが、スタートした途端にクラッチが壊れ断念。今日は何をやってもダメ。逆にこれも試練だとか、楽しもうとか、思い直したら今度は良い事がいくつも起こった。デリーから赴任してきたばかりの軍人と友だちになり、今後3~4年ラダックにいるから何か問題があればすぐ連絡してくれと言われたり、昨日訪問したTIBET HERITAGE FUND(THF)の代表、アレクサンダーさんと町で遭遇し、ちょうど今晩パーティーがあるからと、THFのパーティーに誘われたりと。
でも、飛行機が欠便してラダックに残った理由は別にあったのかもしれない。夜、アレクサンダーさんのパーティー会場から帰る途中、寺院の前にロウソクの火を手にした人だかりがいた。若者から老人まで、皆が僧侶の説法を聞いたり、祈ったりしている。何の集まりかと聞くと、洪水被害者のために集まったのだという。
大勢がバスや車で集まり、犠牲者のために集まっていたのだった。バスの屋根の荷台に乗るほど大勢の人が、追憶のために集まっていたんだと知って、涙が溢れそうになった。そうだよな、洪水からまだ一ヶ月ちょっとだもんな。親戚や友だちを亡くした人はこの中に大勢いたんだろうな。彼らがこうやって寺院に集まってくることを見て、ラダックの人々の中心には信仰が、仏教があるんだなとしみじみ思った。仏教が人々の支えになっていて、コミュニティの中心にあるんだ、ここでは。
ラダックでみつけた、ダライラマ法王の言葉
PEACE
We cannot achieve world peace without first achieving peace within ourselves… Inner peace. In an atmosphere of hatred, anger, competition and violence, no lasting peace can be achieved. These negative and destructive forces must be overcome by compassion, love and altruism, which are the essential teaching of the budda.