タイ北部のラオス国境あたりの町、ファイサーイを出発し、メコン川をゆっくりと南西に下り、ラオスの古都ルアンパバーンへと向かう2泊3日のスローボートトリップに参加した。ツアー料金は2000バーツで日本円にしておよそ6000円で、1泊分と朝食1回分が含まれていた。ほとんどが旅慣れた欧米からの参加者だった。彼らは大体が長期旅行者で、半年、1年とか当たり前に旅をしているものも多い。途中一緒だったフランス人男性は、これから4年間旅をすると言っていた。と言っても、香港と韓国で1年ずつホテルでボーイでもして暮らすという。残りは旅だ。「英語を話せれば、どこでも仕事が見つかるからね」と気楽だ。

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下船内からは、水牛や山羊が水辺でのんびりしている様子や地元の人が投網漁をしている様子など、のどかな風景が見える一方で、両岸には随所に野焼きをした後の荒々しい山肌が見受けらた。最初はこれが有名な焼き畑かと思っていたら、それだけではないようで、調べてみるとゴム・プランテーション開発によるものであることが分かった。自給自足的な生活が否定され、貧困撲滅や経済成長のためにと大規模なゴムの木の植林プランテーションが進められているのだ。

「人々はブルドーザーがやってきて初めて、いずれかの企業に彼らの土地が受け渡されていることを知ることも度々である。影響を受けた家族は、食料や水の不足に直面し、わずかなもしくは全く補償を受けられずに貧困化する。少数先住民族たちの神聖な森林や墓所は破壊される。抵抗すれば、投資家が給与を支払う武装した警備隊の手によって暴力に遭い、逮捕や拘留される」

「このレポートは、このような土地収奪における国際投資家の役割を初めて暴露するものである。ドイツ銀行は両企業の数百万ドルの株を保有しており、一方、世界銀行の投融資部門である IFC(国際金融公社)は HAGL(Hoang Anh
Gia Lai 社、ベトナム大企業)に出資している。これらの投資は両機関の倫理的及び持続的な活動への公約、そしてまた世界銀行の貧困撲滅という主要な使命に完全に反している」

※メコン・ウォッチ「熱帯プランテーション問題解決のための取り組み促進事業」 2013 年度中間報告書より

土地を奪われる先住民たち。自給自足的な暮らしをしていた人々は米を買わなければ生活できなくなる。賃金労働しなければまともな生活ができないという環境の変化によって、これまでなかった貧困が生まれる。貧困撲滅のために始まったゴムプランテーションが、実際には貧困を生み出している。そんな実態があるようだ。

貧困撲滅の取り組みが、実際には貧困を生み出しているような実態。「貧困援助がビッグ・ビジネスに」なる「不都合な真実」。そんな実態に迫ったドキュメンタリー映画をこの夏に劇場公開予定なので、関連して考えさせられた。

映画『ポバディー・インク ~あなたの寄付の不都合な真実~

ところで、ラオスの古都ルアンパバーンはさすがに世界遺産登録されているだけあって美しかった。家の屋根は赤か黒と決められてて、景観が守られているし、近代的なビルも皆無だった。車で1時間ほどで行けるクアンシーの滝は、非現実的と思えるほど美しかった。今はこのような場所に行くには入場料を払わなければ入れないが、過去にはだれでも無料で行けたこのような場所が無数にあったのだろうなと想像すると、残念に思った。現代の「開発」で、大切なものを失い続けてはいないだろうか?

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